8月8日発売スピリッツ36・37合併号にて『風都探偵』第118話「gが死へ招く 8/だから俺は死なない」が掲載されました。
『風都探偵』第118話「gが死へ招く 8/だから俺は死なない」
【次号予告】「スクリームの奴、あれで倒せたかな?」「君との約束を破るわけにはいかない…」「ごめん、竜兄。」「帰ってきた時にはもう…」第118話「gが死へ招く 8/だから俺は死なない」8月8日発売スピリッツ36・37合併号掲載。これで決まりだ!#風都探偵 #仮面ライダーW #FUUTOPI pic.twitter.com/Dc0GSZLyEP
— 「風都探偵」公式 (@fuutokoushiki) August 4, 2022
仮面ライダーアクセル VS スクリーム・ドーパント ついに決着!
「アクセルドライバーにはエネルギーを肉体にチャージし続ける機能がある。」
「それを応用して多段的にマキシマムを重ね、一気に放出したんだ。」
「彼でなくては実行できない恐ろしく危険な技だが…」
空中で爆破したスクリーム・ドーパント。
スクリームメモリとアイスエイジメモリは砕けたけれど、照井竜も消えていた…!!
亜樹子の待つ自宅に戻った照井竜の手には「木枯坂のスペシャルパンケーキ」が(^^)
「君との約束を破るわけにはいかない…」と手渡すと倒れてしまいましたが。
何よりも所長との約束を優先するとは(´;ω;`) 照井竜らしいですね。
事務所で報告書を打つ翔太郎。
生死の境を彷徨っているG研所長・玄道修一郎。
G研の解散は必至。4人も解散の準備を進めている。
亜樹子は「今度こそは身動きさせへん」と照井の病室に張り付いている。
内通者を見つけ、敵幹部のメモリもブレイクしたが
照井は重症、G研はなくなり、メンバーは散り散り。「失ったものが多過ぎる」と言う翔太郎。
G研メンバーは「そう簡単に立ち止まる人達には見えない」とのフィリップの予想通り
元G研メンバーたちは「新生G研」を立ち上げていた!!
地下施設が閉じる前に、こっそりと所内の機材や資料を車内に持ち込んだ「新生G研」(^^)
警察の協力者にはもうなれないけど、これからは仮面ライダー・照井竜の味方になればいい!
「私たち自身の意志で!」
彼女たちのバンのバックドアには、照井竜の赤い皮ジャンの背中と同じエンブレムと「TEAM ACCEL」の文字!!
翔太郎たちの新しい仲間が増えましたね!!
五条一葉を捜してるが、何か気になることがあると言うときめ。
ビルの非常階段の踊り場で、倒れている一葉を見つける。
動ける状態ではなさそうで、裏風都へ戻るためのビゼルも、通信手段のスマホも破損。
「仲間に知らせていいよ」
「嫌いでしょ、アタシの事。」
その言葉を聞いたときめの脳裏に、裏風都での同じシーンの記憶が蘇る。
「嫌いなのはあんたじゃない。メモリだ」と言うと、一葉を抱え歩き出すときめ。
次回は新章開幕!
「gが死へ招く」が収録されるコミックスは8月30日発売!
アニメ『風都探偵』も面白いですね~!!
●「風都探偵」上巻 S.H.Figuarts(真骨彫製法) 仮面ライダーW ルナトリガー(風都探偵アニメ化記念)付属版 コレクターズパック
●「風都探偵」下巻 S.H.Figuarts(真骨彫製法) 仮面ライダーW ヒートメタル(風都探偵アニメ化記念)付属版 コレクターズパック
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再開は46号とのこと。2か月ほど先でしょうか。
スピリッツ46号より。
■カラー扉:ときめ、ピンクのスタッグフォン、五条一葉の後ろ姿、WCJの横顔。
■第119話『yの魔窟 1 / ときめの願い』
五条一葉を自宅に匿い看病するときめ。全身包帯でベッドに横たわる五条一葉が意識を取り戻し話しかける「……バカな事、したネ… アタシなんかほっとけば良かったのに」。「そんな事、できなかった… なぜか…」と答えるときめだが、「……ちょっと…思い出し始めてる…?」という一葉の問いかけには無言である。急に苦しみ始める一葉。ガイアメモリによる傷害は通常の治療では治らないという知識はあるときめは、せめて痛みだけでも止める方法があればと呟く。「痛み… ……ヨーク…」とうわ言のように声を出した後、一葉は、ダメ元でもよいから薬を買って来てほしいとときめにお願いする。ときめが外出から帰って来た時には、部屋はもぬけの空、姿見に口紅で「サヨナラ 追わないで」との書き置きが残されていた。一人で一葉を匿おうとした自分の判断自体が間違いだったと後悔するときめ。壁に寄りかかりながら荒い息遣いで線路下の道路をヨロヨロと歩く一葉。
鳴海探偵事務所。ときめは、翔太郎、フィリップ、亜樹子に対し、五条一葉を匿っていたが逃げられたこと、大道克己/仮面ライダーエターナルとWとが戦った日に万灯雪侍と共に風都にいた記憶と五条一葉との記憶が蘇ったことを告白する。フィリップは一つの推理を述べる。旧組織(ミュージアム)の崩壊前から万灯の仲間だったのであれば、幹部としてドライバーが与えられていた可能性も高く、そうなると身体にメモリスロットはなくともジョーカーメモリを使用していた可能性もある、と。翔太郎はときめを厳しく問い詰める「今頃、そんな話を打ち明けて、おまえはどうするつもりなんだ!」と。亜樹子とフィリップが翔太郎をなだめるが、翔太郎はより厳しい言葉を発する。「それでも五条一葉が多くの人間の命を奪い、照井を死の淵まで追いつめた凶悪殺人犯である事には違いない。それを一度かばっておいて、今さら何を俺たちにすがるんだ? 答えろよ、ときめ!」。ときめはバッグから取り出した封筒をテーブルの上に置く。封筒の中からはジャラジャラと小銭が飛び出し、中には紙幣も見えている。これまで探偵助手の給料として貰った全額で生活費以外は手をつけていないのだという。これを依頼金として五条一葉を探してほしいと言うときめ。ときめは強い語調で語る、照井に敗れ完全に折れていた一葉はもう人を殺せない、それは裏風都にとって利用価値がなくなったことを意味するから絶対に始末される。「それじゃ…もう罪を数えられなくなっちゃう… 私の力だけじゃ助けられない! だから!」と顔を伏せるときめ。「わかった。それでいい」とときめの肩に手を置く翔太郎。「おまえが自分の事だけを考えて動いてたのなら、怒鳴りつけてやるところだった。どんな最低の極悪人にも罪を償う権利はある。いや、罪を悔い続けながらその後を生きる事以上の罰はこの世にない! 甘いかもしれねぇが、俺はそう思っているんだ。いつの間にか、ちゃんと俺の探偵助手になってくれてたんだな、ときめ!」「おまえの意志が最初から五条一葉を助ける事で揺らぎねえなら、なんの文句もない。受けるぜ、おまえの依頼。彼女を裏風都より先に見つけ出す!」と翔太郎。「ありがとう!」と思わず翔太郎に抱きつくときめ。依頼人扱いはしないから助手として手伝えと翔太郎。そのやりとりに安心して顔を見合わせるフィリップと亜樹子。
早速地下室で捜査会議を始める四人。手掛かりを尋ねられたときめは、一葉が発していた「ヨーク」という言葉を伝える。「yoke」であれば衣服のパーツか牛同士の首をつなぐ「くびき」、転じて「支配」「圧迫」「束縛」の意味がある、とフィリップ。フィリップは検索を開始する。
裏風都。双見 光が、一葉の壊れたスマホと壊れたビゼルを入れたジップロックを円筒の装置かテーブルかの上に置き、捜索状況を万灯に報告する。秀夫はボーンズに捜索させることを提案するが、万灯は光や秀夫には背を向けたまま、冷静に答える。「そうだねえ…… 彼女は素晴らしい才能だったよ。過去最高の殺し屋だった。だが、最大の熱情を注ぎ込んで殺そうとしたアクセルに返り討ちにあった今、おそらくその心は砕け散ったはず… もう死んでいるかもしれないが、それでも死体を確認する必要があるしな… 残念だ、とても。だが、組織としては空席を埋めるしかない。と、なると… 切るべきカードは一つ。」 秀夫と光は凄まじい殺気を感じ、その方向を見詰める。闇の中、廊下にいた人物が靴音を鳴らしてこちらへと歩いて来る。オールバックに撫で上げた長髪に丸眼鏡、軍服のようなロングコートのポケットに両手をつっこんでいる。秀夫はその男の名を知っていた。── 矢ノ神夜一(やのがみ・よいち)
・次号予告に『風都探偵』なし。
最新号(10/24発売)の目次頁の小さな文字によると、「yの魔窟」編、次号(48号)にて再開とのことです。
スピリッツ48号より。秀夫が、万灯の采配をトランプに例える点がシャレてますね。ではジョーカーの、ときめの、万灯による使い方は?
■第120話『yの魔窟 2 / 追跡者たち』
裏風都。消息不明となった五条一葉の処分の話をする万灯雪侍、千葉秀夫、双見 光に歩み寄って来る男、矢ノ神夜一(やのがみ・よいち)。矢ノ神を野に放つことに否定的な反応を示す秀夫に対し、一葉が抵抗したことを想定しそれでも一葉を始末できる「プロの死神」を差し向けるべきだと答える万灯。自分が「プロの死神」と呼ばれたことに笑みを浮かべ踵を返して任務に向かう矢ノ神。万灯の元を去る秀夫と光。二人きりの廊下で秀夫は光に話しかける「……光さん。これは我々にも火の粉がかかるかもしれませんよ。あなたとはまだ短い付き合いだが、教えておきましょう。どんなにリスキーな一枚でも手札に入れておく。それが万灯さんという人のカードの使い方なんです。あの人は勝利のためなら札は選ばない」。矢ノ神は一葉よりも危険な人物なのかと問う光に対し「一葉さんとはタイプの違う殺し屋です。身体能力では多少劣りますが、ある決定的な能力を持っている。その気になったら我々も脅かされるほどの…」と答える秀夫。さらに光に背を向けて去りながら秀夫はこう言い残す「それともう一つ。使えないとわかったカードは即墓地に捨てるのも万灯さんの特徴です。お互い墓地に捨てられないように頑張りましょう」。思わずぞっとする光。
一葉を捜索する鳴海探偵事務所。フィリップは「yoke」について検索するが手掛かりは見出せない。ときめが万灯のことを「ユキ」と呼んでいたという証言から、翔太郎がときめと万灯の関係を疑っていることを指摘し、全く無神経になぐさめるフィリップ。そこに亜樹子が手掛かりを得たことをときめが知らせに来る。入院中の照井に面会し、「yoke」というキーワードから照井が思い当たった一葉に関する捜査資料を、刃野がこっそり貸してくれたのだという。オウル・ドーパント事件の際の資料の中に、何からの破壊された部品の写真があり、その部品には「OKE」と印字されていた。破壊されている、部品の本来の前部分に「Y」の文字があったとしたら「YOKE」となる。G研が調査した付着物質の成分表の資料もあり、フィリップはそれを奪うように手に取ると即検索に入り、結論を得る。フィリップによると、「YOKE」は薬剤の呼称、写真に写っているのはアンプルの一部、その薬物の効果はガイアメモリ使用者のメモリ後遺症の痛みを緩和すること。しかしそれは治療薬ではなく苦痛を麻痺させる効果しかなく、有能なドーパントを生み出そうとしていたオウル・ドーパント:鳥羽音吉が、戦場で使用される麻薬と同様の用途として使用していたものに違いない。やはり鳥羽音吉に見出された五条一葉は、当然その存在を知っておりyokeを入手しようとしているのだろう、と。そこはおそらくガイアメモリに溺れyoke無しには生きていけなくなった魔人の巣窟。それ無しには生きていけないことから「くびき」「束縛」の意味を持つyokeと呼ばれているのだろう、とフィリップ。鳥羽音吉の所業に改めて怒りが治まらない亜樹子。しかし一葉の追跡が困難であることには変わりないと言うフィリップに対し、鳴海壮吉の写真を見詰めながら師匠の言葉「人の足取りは心の道」を口走り、yokeの使い道を知ったことは必ず突破口になる、と帽子をかぶり出かけようとする翔太郎。その言葉に希望を持ち同行しようとするときめ。
夜の風都、ビル街。飛翔する一体のコックローチ・ドーンパント。その腹部を光線のような何かが射抜く。狭いビルの谷間に墜落し変身解除される若い男。「な? 素直に話をしたほうが良かったろう? 大人を舐めるとロクな事はない」と、死神のようにも見える、実体が揺らいだ何者かがその男に話しかける。少しして、その路地から矢ノ神夜一か出て来る「……なるほど…… yoke…か… 尻尾が見えたぞ。悪くない」。ビルの谷間には若い男の死体が残されていた。
・次号予告に『風都探偵』なし。
11/7発売の最新号の目次頁の小さな文字によると、再開は次号(50号)とのこと。今のところ順調な隔週ペースですね。
スピリッツ50号より。次回、死神との初戦。
■第121話『yの魔窟 3 / 安らぎの泉』
ときめを乗せハードボイルダーで風都を駆ける翔太郎。向かった先は、盗品や薬物など違法物件を売りさばく店が集合した闇市場。盛り上げた頭髪・濃い化粧・ジャラジャラのネックレスにドレスで水煙草を吹かす老女、闇市場の「主」のようなマダムに聞き込みをする翔太郎。翔太郎が写真を見せたゴスロリ少女は、ガイアメモリを売りさばく店で「クスリをよこせ」と要求し、ないと答えた店主を病院送りになるほど痛めつけ、店主が叫んだ「yokeなんか手に入るわけねえだろ! 欲しけりゃ『安らぎの泉』に行け!」という言葉を聞くと店主を投げ捨てて去って行ったとのこと。礼金をテーブル上のガラスコップに突っ込んで出ていく際に、ヤバい匂いがするからそのタバコやめといたほうがよいぜと声をかける翔太郎に、「メモリの百倍は健康的だよ」と答えるマダム。
翔太郎からの報告を受けるフィリップ。それを傍らで聞いていた亜樹子が、オウル・ドーパント/王道学習塾の塾長の所業を口にしたことから、「塾」というキーワードに気付いたフィリップは、改めて検索した結果から翔太郎に目的地を指示する。ヒットの連続に今回は「猛打賞」だと褒められる亜樹子。
風都中心部を離れトンネルを抜けて翔太郎とときめが辿り着いた先は閉鎖されている施設。それはオウル・ドーパント/鳥羽音吉の学習塾が所有し集中講座やリラクザーションに使用していた建物だった。「安らぎの泉」と聞くと即座に闇市場から立ち去ったという五条一葉の行動から、一葉にとってすぐに思い当たる場所、それは「塾」の施設だろうと推理し、さらにyoke生成には大量の水が必要であることから「泉」という名称はそれに由来するものだろうというフィリップの考えにより到達した場所だった。手分けをして周辺を捜索する翔太郎とときめ。翔太郎は施設を観察しながら施設の塀の周りを歩き、建物を離れたときめは周辺の森の中に小道を見つける。
森をよろよろと歩く一葉を発見し駆け寄るときめ。全身がちぎれるように痛く、殺人による絶頂を失った自分が静かに快楽を得るためにはyokeの力を借りるしかないと告白する一葉。一葉の超感覚が施設の周囲を踏査する翔太郎を捉える。「今カレと来たのネ」と指摘する一葉は「かくまったりして怒られたでしょ?」と確認する。「…………後悔したよ。心から悔やんだ。最初から翔太郎たちに相談すればよかったって。そうすればもっと早くあんたを助けられた!」と涙を浮かべて後半は叫ぶようになる ときめの言葉に胸を打たれる一葉。「翔太郎は一緒になってあんたを助けてくれる人だった! そんな事、初めからわかってた事なのに!」と続けるときめに、「相変わらずだネ… …ときめサン」と返す一葉だったが、その背筋を悪寒が走る。急にガタガタと震えはじめ「……ヤバイ… 最悪な奴が来たっぽい」と口走る一葉。彼女の超感覚が捉えたのは矢ノ神夜一(やのがみ・よいち)。矢ノ神はほどなく二人の目の前に現れた。すかさず翔太郎に連絡するときめ。翔太郎は駆け出しながらダブルドライバーを装着し、フィリップに手短に状況を伝える。その姿はCJとなりそのまま駆けて行く。
「どけ。yokeを欲しがるような女だ。安らかな終末を願ってるんだろ! 私がこの手で救ってやるよ」と手を差し伸べる矢ノ神。木に寄りかかって立っている一葉をかばうように身構えるときめ。二人と矢ノ神の間に旋風が生じ、Wが現れる。[仮面ライダー。敵をかばうのか?」と矢ノ神。「るせーな。こっちの勝手だ」と翔太郎。「別に構わんよ。死体の数が少々増えても。……こっちはプロの死神だ」と言い放ちニタァと笑う矢ノ神がガイアメモリを掲げる。そのメモリには大鎌が「D」の形を描いたアイコンが描かれていた。そのメモリに見覚えがあるフィリップ。ガイアメモリの起動音を鳴らし、メモリを左の手のひらに挿す矢ノ神。その姿は嘗てダミー・ドーパントが化けていたドーパントと全く同じ姿へと変貌する。髑髏が四つ縦に並んだ頭部から胸部、ボロ布のようなものをまとい、縛り首人形をぶら下げた棒の先端にナイフを括り付けたような大鎌を持つ。デス・ドーパントだった。
・次号予告に『風都探偵』なし。
11/21発売の最新号の目次頁の小さな文字によると、再開は次号(52号)とのこと。安定の隔週ペースです。
スピリッツ52号より。
■第122話『yの魔窟 4 / 死神』
裏風都が五条一葉の処分のために差し向けた殺し屋・矢ノ神夜一(やのがみ・よいち)は、Wの目前でデス・ドーパントに変身した。その姿には翔太郎もフィリップも見覚えがあった。ダミー・ドーパントは、実在したデス・ドーパントを自身が目撃したか、目撃した誰かの記憶を使って、その姿をコピーしたのだということを、フィリップは理解した。ダミー・ドーパントが変身していた姿とは殺気が段違いだ、と翔太郎。「さすが仮面ライダー……見る目がある。そう思うなら邪魔はやめてほしいな。私の目当てはその女…五条一葉の生命だけだ」とデス・ドーパント。「いやなこった!」と即答する翔太郎。「バカ! 戦わないでとっとと逃げなよ! そいつにはどんな相手もかなわない! 一方的にやられるだけなんだからサ!」と叫ぶ一葉。「その通り……」と呟いたデスの、上から二番目の髑髏の目が光り口が開く。攻撃の気配にときめや一葉を庇うW。結果、デスの二番目の髑髏の口内から弾丸のように放たれた長い舌は、前に付き出したWの左前腕部を貫くと、あっという間に髑髏の口内に収納された。Wの左半身は真っ白に変色し、動かせないほどに力が入らなくなった。ダブルドライバーのジョーカーメモリの状態を確認したフィリップは、デスの攻撃はガイアメモリの力自体を消すことができるということを悟った。
デスが告白する。デスメモリの真の力は「ガイアメモリの力を殺す」こと、メモリ使いにとってはまさに死神。万灯も自分のメモリを無力化される危険を考慮すると側には置きたくないだろうと、デス自身の見解を述べる。五条一葉失脚のおかげでやっと出番が回ってきた、とデス。「メモリを持たない人間にはこの一刺しで充分!」と大鎌を振りかざしてデスが一葉に突進してくる。一葉をかばうときめ。Wは左半身の力が出ず動けない。しかし翔太郎は打開策を閃く。「死神から逃げられる人間などおらん!」と駆け寄ってくるデスに、「ああん? のぼせんなよ、殺し屋風情が」と翔太郎。「てめえだって人間の…メモリ使いだろうがッ!」という叫びとともにカウンターの左パンチをデスの腹部に叩き込むW。サイクロンメタル! Wはジョーカーメモリをメタルメモリに交換していた。吹っ飛んだデスに追い打ちをかけるため走り寄るWに向かって、先ほど舌を伸ばした上から二番目の髑髏以外の三つの髑髏の口内から舌が伸びる。巧みにかわすWだったが、右手の甲を一本の舌に貫かれてしまう。足を止めず、すかさずメモリチェンジするW。ヒートメタル! 勢いは衰えずデスに肉薄しメタルシャフトで攻撃するW。鎌でしのぐものの押し負けて後方にとばされたデスは、下の二つの髑髏から舌を伸ばしてWを攻撃する。メタルシャフトを回転させてそれを防ぐW。しかし舌の一本が右肩を掠めてしまい、Wはルナメタルへと変わる。Wの肩を掠めた舌が収納された三番目の髑髏の変化から、髑髏一個につき消すことのできるメモリの力は一つであることを見抜いたWは、メタルシャフトを鋼鉄の鞭に変えて迫る舌を叩き落としながら、最後の髑髏に的を絞ってデスに駆け寄る。目の前に迫ったデスの左手のひらから新たな髑髏が出現し、そこから放たれた舌がWの左胸をストレートに貫き吹っ飛ばされるW。「甘いな、この髑髏はいくらでも増やせる。チェックメイトだ」、残った四番目の髑髏がニタリと笑う。「…いーや、こっちの王手が先だったぜ」とW。ルナトリガー! 左右一本ずつのメモリを残してデスの能力の仕組みを見切った時点で、詰んでいると言い放つWは、光弾を連射してデスの足を止めると、マキシマムドライブ「トリガーフルバースト」を放つW。様々な弾道で一斉に着弾した光弾により爆散するデス。犠牲になった4本のメモリを両手に広げるW。メモリの力を消すという敵の能力に動揺してしまい何もできなかったフィリップは翔太郎に礼を言う。翔太郎は、ジーン・ドーパントに右手を牛のパペットに変えられた時にメモリチェンジしてリセットしたことを思い出したのだという。
「…………………………悪くない」頭上から声が聞こえた。樹上にしゃがんでいる矢ノ神は、デスメモリをこちらに見せつけ、それがブレイクされていないことを示す。着弾直前に外皮のみを残して脱皮し、本体は樹上に逃げたのだろう、とフィリップ。「いやはや本当に悪くない。歴戦の勇士の貫禄を感じたよ、仮面ライダー。感服した。今後できれば私を見逃してくれないか」と着地した矢ノ神。「…………んだとぉ?」と言うWに対し、矢ノ神は「君たちとの戦いは無駄な手間だ。仕事は楽にこなしたいんでね。そもそも殺人しか興味のない極悪人が死ぬのは君たちにとって良いことだろう?」と続ける。その言葉に矢ノ神を睨みつけるときめだったが、振り返ると一葉は既に姿を消していた。「そら見ろ、そういう女さ。後は私に任せて家にでも帰れ……」と言い残してW達に背を向けて去る矢ノ神は裏風都へと姿を消す。変身を解除した翔太郎から「……だってよ。どうする、相棒?」と問われたフィリップは「…決まっている。家に帰るなどもってのほかだ」と答える。暫くすると翔太郎とときめの目の前にリボルギャリーが到着する。前部ハッチが左右に開き、フィリップと亜樹子が降りてくる。リボルギャリーのハッチはそのまま開き続け、鳴海探偵事務所の地下ガレージで普段待機している際のフルオープン状態となる。「……逆に…『家』ごと来る!」とフィリップ。
・次号予告に『風都探偵』なし。
5日発売の新年1号の目次頁の小さな文字によると、再開は次号(12日発売2·3合併号)とのことです。
スピリッツ 2・3合併号より。
■第123話『yの魔窟 5 / メモリが呼ぶ声』
デス・ドーパント/矢ノ神夜一の一時撤退後も、オウル・ドーパント/鳥羽音吉が経営していた学習塾の別館が建つ山間の森にて五条一葉の捜索を続ける鳴海探偵事務所の面々。デス・ドーパントとの衝突後、フィリップと亜樹子がリボルギャリーごと現地にやってきたのは、捜索のために事務所にある装備を全て現地に持ち込むことが目的だった。フィリップは、バットショットにデンデンセンサーを掴んで飛ばせ、上空からのセンシング結果と映像をPCでモニタリングしながら、一葉が探す「安らぎの泉」と呼ばれる施設の手掛かりを探っていた。「ダメだあ、亜樹子お。見つかんねえ!」 ホワイトボードに周辺の地図を貼っていた亜樹子に翔太郎の声が聞こえてくる。その言葉を繰り返すのは池の中の探査を終えて跳躍しながら帰還した、ライブモードのフロッグポッドだった。自分の声を真似ることに怒る翔太郎。上空からのデンデンセンサーによる走査にも反応がないことから、「安らぎの泉」は透過できない深さの地中にある施設だと推理するフィリップ。翔太郎は、ヘルメットを手に「地道に片っ端から入口らしい場所を探し出すしかねえわけだな」と言いながら、リボルギャリー後部のリボルバーハンガーを回転させている。ハードボイルダーの後部ユニットが換装され、ハードタービュラーが離陸準備を整える。デス・ドーパントの襲撃に備えドライバーは装着したまま、デスのガイアメモリ無効化という能力を考慮しメモリ交換が自由なWの通常形態で臨むことをフィリップと示し合せてハードタービューラーに跨る翔太郎。バットショットとデンデンセンサーは呼び戻すから池の北側から探ってほしいと依頼するフィリップ。飛び立ったハードタービュラーを見送るときめは、亜樹子が積み込んだというボックスを外に運び出したところだった。フィリップは、それは修理中の装備を容れているだけだから今回は不要だ、と声をかける。亜樹子がボックスを開けてみると刃の折れたエンジンブレードやガラクタのようなものが入っていた。ときめはそのボックスの中に、自分が裏風都から現れた時に持っていて、フィリップにより不完全ながら修復された破損したジョーカーメモリを見つける。修復されていたことを知らなかった亜樹子は驚く。フィリップによると本来の三分の一程度の出力しかないという。ときめはフィリップにこれを貸してほしいと頼む。自分の、ドーパントや裏風都を感知する能力は、ジョーカーメモリを持っていた時のほうが強かった気がする、と。記憶も戻っていない中、自分がドーパント化するといった悪影響を否定はできず、強気にはなれないときめに、フィリップは「少しぼくの昔話をしよう」と語り始める。それは「メモリブレイク」発明のいきさつだった。
二人がWとして活動し始めた時、まだメモリブレイクは無かった。そのためマキシマムを使えばドーパントを死に至らしめていた。翔太郎はそのためにドーパントへのとどめを躊躇うようになり、結果ガイアメモリ犯罪者を取り逃がしてばかりとなった。そんな翔太郎にフィリップは反発し口論となる。既に正気を失っており殺人などの犯罪を継続する犯罪者をかばい野放しにする行為だと翔太郎を激しく責めるフィリップ。翔太郎はうつむいたまま答える。「わかってる…… 俺だってメモリ犯罪者は憎い! 許せない! でもよ…… 死んじまったら……もう罪を数えられないじゃねぇか!」 悪に対し罪を数えるように問う、それが師匠・鳴海壮吉から受け継いだ、翔太郎にとっての絶対の流儀だった。その切実で真剣な言葉に、フィリップはドーパント体内のガイアメモリの回路のみを破壊する方法の研究を始めた。Wが二人の変身体であることを利用し全く同威力のエネルギーを二つに分けてぶつける手段を立案、それを実装し、二人のタイミングを合わせるために翔太郎の考えた技名を叫ぶ事に決めることで、メモリブレイクが完成した。初使用はバット・ドーパントに対するジョーカーエクストリームだった。ドーパントが爆発した後、メモリが破壊されており、犯人の若い男の息があることを確認したW、黙って静かに左手の親指を立てる。「どうした翔太郎? 何か不備が?」と言うフィリップに対し、「いや……なんでもねえ。ありがとうよ……相棒!」と翔太郎。フィリップによると自分を「相棒」と呼んでくれたのはその瞬間が初めてだったという。仮面ライダーアクセルの装備に当初からメモリブレイクシステムが実装されていたのは、母(シュラウド)が自分達の流儀に賛同してくれてのものなのか、それが対ドーパント戦闘では効率的であると考えたからなのかはわからないと付け加えるフィリップ。
亜樹子は父の流儀とそれが継承されていることにご満悦である。翔太郎の「死んじまったら……もう罪を数えられないじゃねぇか!」という言葉と同じ言葉を発したときめを、翔太郎と同じ心を持つ者を信じる、その心が五条一葉にも通じることを信じる、とフィリップ。ジョーカーメモリを持って行くことを許されたときめは、メモリを下着にはさむとリボルギャリーから跳び下りる。駆けて行くときめを、忠告があると呼び止めたフィリップは、恋人でもない異性に簡単に下着を見せるのは感心しない、と言う。「君は自分が思っているより遥かに扇情的だし、何よりそういう態度は高確率で翔太郎の動揺を生む。気をつけてくれ」とフィリップ。ときめに対してまでオカンっぽくなってきとる、と感じる亜樹子。「わ、わかった。ごめん……」と、顔を赤らめながら一葉捜索のために森へと駆け出すときめ。デス・ドーパント襲撃に備えてドライバーを装着したままのため会話が筒抜けの翔太郎も、ハードタービュラーの上で顔を真っ赤にして恥ずかしがる。
他の場所を走査しているのかデンデンセンサーを掴んで飛行するバットショット、森林の木の枝を這い渡りながら捜索するスパイダーショック、水中を捜索するフロッグポッド、森の中を進むときめ、空中から地上を注視する翔太郎。メモリガジェットから送信されてくるデータを解析していたフィリップが何事かに気付く。
デス・ドーパントとの戦闘中の目を離した一瞬に全身を激しい痛みに襲われている一葉が遠くまで行けるはずはないと考えるときめは、矢ノ神と遭遇した場所の近くを探る。その時、ジョーカーメモリから熱さを感じる。下着からメモリを取り出し手に持ったときめは、矢ノ神のものとは違う嫌な感覚に「安らぎの泉」の反応だと考える。ときめは、ガイアメモリに対する感覚がやはり明らかに鋭くなっていることに、このこと自体が嘗ての自分がジョーカーメモリを手放せなかった理由ではないかと思い当たる。周囲を観察するときめは、岩に偽装された地下へ進む階段への入口の扉を発見、岩を動かしてその下に隠れていた穴の階段を降りて行く。辿り着いた地下の床には滲みだした水が少し流れていた。内部を進んだときめは広い空間に出る。そこは高い天井に向かって木の幹のような柱が何本も立ち、その柱の表面には古代生物の化石のような凹凸が上下に繋がっていた。天井は部分的にうっすらを光っているような場所がある。その禍々しさに圧倒されるときめ。
・次号(12/26発売4・5合併号)予告に『風都探偵』なし。次回は年明けですね。
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
スピリッツ 6号より。y編も佳境です。『風都探偵』全体としても徐々に核心に近づきつつあります。
■第124話『yの魔窟 6 / ときめと一葉』
[カラー扉]仮面ライダーW CJ、背後には頭上にピンクのスタッグフォンを構えるときめ。
オウル・ドーパント/鳥羽音吉が管理していたと思われる「安らぎの泉」と呼ばれる地下施設らしき場所に辿り着いたときめ。そこは、古代生物の化石のような凹凸が表面を走る太い円柱が何本も天井と床との間に立っている、禍々しい場所だった。ときめは、その場所が、ガイアメモリによるダメージを麻痺させる薬「yoke」の生産「工場」ではなく、施設自体が半ば生物であり。その体液として薬「yoke」が滲み出しているということに気付く。あちこちに散見される白骨化死体を目にしたときめは、ここが、ガイアメモリ中毒の苦痛に耐えきれなくなった者達がyokeをすすりながら安楽死していく場所であることを理解する。白骨化死体の手の骨の先にはガイアメモリも落ちている。五条一葉にもう生きる意思がないことに気付き「早くっ!……一葉を探さなきゃ!」と独り言を発して、一葉を探すことを急ごうとするときめだたが、それを呼び止めるような声がかかる、「それは私の仕事だ」。ビクッとし振り向くときめ。そこには矢ノ神夜一が立っていた。軍服のような上着の襟を、両腕をクロスさせてビシッと締める矢ノ神。
フィリップから指示された地点にハードタービュラーを着陸させる翔太郎。そこは既に埋められた、地下施設への入り口のように見えた。翔太郎は、タービュラーを降りてフィリップと会話しながら調査を進める。フィリップによると、これは河川が氾濫した際に水を逃がす放水路であったが、今は別方向に水路が造られ廃棄されているのだという。上空から森林全体を眺めていて、森林自体が水害対策となっていることに気付いたフィリップが、鳥羽音吉が利用しそうな施設として探り当てたのだった。フィリップの傍らで、亜樹子が、ときめのスタッグフォンが圏外になっていることに気付く。翔太郎は、Wに入口を埋められた地下施設に突入できる能力も装備もないことに焦り、今やアクセルブースターで地下へ掘り進むこともできる照井が入院中であることに繰り言を言う。「問題ない。照井 竜の代役が加勢に来てくれている。そろそろそちらに着く」とフィリップ。出現した大きな影に驚く翔太郎。
地下施設内。矢ノ神を見詰め「……殺し屋…」と漏らすときめに、「『死神』…と呼ばれたほうが嬉しいな」と返す矢ノ神。矢ノ神は、自ら入口を探すのではなくときめが入口を見つけるのを見張っており、後を追って来たのだった。矢ノ神はときめを「ときめ『さん』」と呼ぶ。自分のことを知っているのかと問うときめ、ときめが記憶喪失であることを思い出す矢ノ神。矢ノ神は裏風都でのときめことを語り始める。「あんたは私の大先輩だ。私の先代が五条一葉、その先代があんただ。あんたは裏風都史上最強最悪の切り札……『魔女』と呼ばれた殺し屋だ」 衝撃を受けるときめ。「ふははっ。なっ?『殺し屋』よりは『死神』のほうが少しはマシだろう?」と言う矢ノ神は、だから記憶がなくガイアメモリも無かったとしても、ときめも仮面ライダー同様に戦いを避けたい恐ろしい相手なのだ、と続ける。これらを踏まえ改めて「現役」から「先輩」へのお願いとして「どいてくれ」と言う矢ノ神。思いがけない自分の正体を知り震え始めたときめだったが、それでも「…………い、嫌だっ! させないっ!」と声を絞り出す。両腕をクロスさせて軍服風の上着の詰襟を締め直す矢ノ神は「なら…いくらあんたが重要人物でも、大怪我ぐらいはするかもしれんよ」と言い放つ。身構えて後ずさりするときめ。その時、矢ノ神の背後の柱の表面の大型生物の肋骨のようなモノが一本折れ、矢ノ神の背の左肩の後ろ側に刺さる。悲鳴を上げる矢ノ神。見えない何者かに手を引かれるかのように走り去るときめ。矢ノ神は左手で刺さった骨を引き抜きながら「……悪くない刺し方だ。私の背後をとれる奴がこの世にそう何人もいるとは思えない……」と呟き「そっちから出てくるとはねぇ!」とデス・メモリを取り出し起動する。
柱の陰に隠れるときめは、息がはずむ中「……一葉!だよね?」と傍らに呼びかける。右隣にしゃがんだ一葉が姿を現す。この施設に転がる白骨化死体の一つが握っていたインビジブルメモリを拾いk自分のドライバーに挿して使ったのだった。「ここまでおバカさんだなんてね、ときめサン。何度も何度も止めたのにサ…」と言う一葉の目を見詰めて、「…バカだけど間違っちゃいなかったよ。あんたは人を助ける人間になれるってわかった!」と答えるときめ。一葉は「そっか……バカはアタシか… 人殺しが…メモリで人を助けちゃうなんて…」とインビジブルメモリを手にため息をつく。一葉に合わせてしゃばがんでいたときめはスクッと立ち上がると一葉に逃げることを促す。こんな墓場にはいちゃいけないとときめ、今のアタシには丁度いい居場所だと言う一葉。「ここじゃできないよ……」、そして一葉に対しあの指差しポーズをキメながら「あなたの罪を数える事が!」と、ときめ。ときめは、微かに微笑んだかのように見えた一葉に手を差し伸べる。「酷だなぁ、ときめ大先輩」――天井から逆さにぶら下がるデス・ドーパントがこちらを狙っていた。一葉は、即座に立ち上がり、ガイアドライバーrexにインビジブルメモリを挿しながら駆け出す。途中から完全に姿を消した一葉だったが、デスは、その走路の先と思われる場所に大鎌を投げつけて牽制し、その少し手前の場所をめがけて舌を撃ち出す。舌は見事に一葉に命中、メモリの能力を奪われ姿を見せた一葉が倒れ、ドライバーとインビジブルメモリが床に転がる。ときめは一葉に駆け寄り庇う。柱に刺さっていた大鎌を手に取り構えるデス。「後輩を困らせるなよ。死にたい奴は死なせてやれ。ただし! 仕事上呑気に安楽死は待てん。今すぐここで! 死をプレゼントしようか」デス・ドーパントが突進してくる。一葉に覆いかぶさるときめ。そこに、太い円柱の森をすり抜けて、様々な軌道を取りながら複数の光弾が飛来する。停止し、どうにか全弾を大鎌で弾くデス。重機の駆動音のような音が響く。「間一髪で間に合ったな」翔太郎の声が聞こえる。「このマシンがなかったら危なかった。照井 竜から預かってリボルギャリーに搭載してくれていた亜樹ちゃんに感謝だ」続けてフィリップの声が聞こえる。そこには仮面ライダーアクセルのサポートドロイドである「ガンナーA」と、その上に乗る仮面ライダーW ルナトリガーの姿があった。塞がれていた施設への入口をガンナーAに掘らせて駆けつけたのだった。ガンナーAのスコープが怒り顔のように変化し、デスに向かって突進する。追い打ちの光弾を放つとガンナーAから跳び下りるW(フィリップ)は、ときめに五条一葉を守れと指示する。デス・ドーパントに正面から衝突したガンナーAはそのままデスを柱まで押し付け、車体を柱に乗り上げるようにして、柱との間でデスの動きを完全に封じた。そこにトリガーマグナムから光弾を撃ち込むW。「どうだッ!」とW(翔太郎)。動きを封じられたままのデスが口を開く、「『どうだ』? 『どうだ』か… 悪くない。前の戦いで一番効果のあったフォームで先陣を切り、私の能力が効かないマシンを盾にして遠隔攻撃… …非常に効果的だ。こちらの手札が前のままなら負けていたかもな」「私の殺しには誇りも美学もない。楽が一番だ。こっちも呼んでおいたよ、助っ人を……!」
「うああっ!」ときめの叫び声が聞こえ、Wが振り向く。ときめは光の布のようなもので全身を絞めつけられていた。ときめと一葉の間にはオーロラ・ドーパントが立っていた。ときめを絞めつけていたのは、オーロラが腰に巻いているローブのような光の帯だった。「万灯!!!」と声を上げるW(翔太郎)。「……辛そうだね、一葉。こんな場所に来るほど苦しんでいたなんて…」と静かに話しかけるオーロラ。光でできた右の手のひらを広げ、上半身だけを起こしている一葉の頭上にかざす。「今、楽にしてあげよう」
・次号予告に『風都探偵』なし。
スピリッツ 8号より。遂にジョーカー・ドーパント登場。今回のエピソード、ときめもやはり「ババを引く(愛する人を失う)」運命にあるということでしょうか。
■第125話『yの魔窟 7 / 涙』
上半身だけを起こしている五条一葉の頭上に、光でできた右の手のひらをかざすオーロラ・ドーパント。その手のひらが輝きを増す。目を見開く一葉。オーロラが異変に気付いた時、その右手は光弾3発によって弾かれていた。ガンナーAにデス・ドーパントを「安らぎの泉」の巨大な柱に圧しつけさせて動きを封じた、W ルナトリガーの攻撃だった。しかし意識をオーロラに向けた隙にデス・ドーパントの舌が伸び、Wは左手を貫かれてしまう。ダブルドライバーのルナメモリが輝きを失い、右手に持っていたトリガーマグナムが消滅する。デス・ドーパントへの対抗策である遠隔攻撃能力を失ったことを指摘するフィリップに、「仕方ねえだろ。あっちをほっとけなかった!」と翔太郎。ガンナーAにデスの動きを封じることを命じ、オーロラに向かって駆け出すW。「目」が光ったガンナーAは、左右のアームを伸ばしてデスの身体を掴むと床に叩きつけ、自分自体も左右のアームを使ってジャンプしデスの上に落下すると、キャタピラを回転させてデスを轢き潰す。苦悶の悲鳴をあげるデス。Wは、トリガーメモリをメタルメモリに交換し、メタルシャフトを鋼鉄の鞭に変えて、オーロラに襲いかかる。
腰のローブで拘束していたときめを解放し宙に舞い上がるオーロラ。その方角にメタルシャフトを振るうW。鞭となったメタルシャフトの先端を「安らぎの泉」の柱の表面の「骨」に絡みつかせ手繰り寄せることで宙を舞ったWは、オーロラに肉薄する。Wのメタルシャフトの鞭による攻撃を、後頭部の辮髪で受けるオーロラ。「万灯! てめぇっ!」と翔太郎、「掃除をしに来るたびに怒るね、君たちは」とオーロラ、「当然だ!」とフィリップ。「だが……少々不利なのではないか? この場にデスがいる以上、君たちはうかつにエクストリームを使えないだろう? 通常のWで私と渡り合えるとでも!?」とオーロラ。空中でのWのメタルシャフトとオーロラの辮髪との攻防の末、オーロラの辮髪の一撃をボディに受けたWは床に叩きつけられる。「だったら…ステゴロ勝負だ。俺たちのベストバランスで……な!」起き上がったWは、サイクロンジョーカーにフォームチェンジする。「ああ、たしかに。そっちのほうが怖いな。かえって気が引き締まるよ。左 翔太郎くん」とオーロラ。「気安く呼ぶな!」と叫びキックを放つW、それをのけぞってかわすオーロラ。空中での攻防が続く。
その隙にと、一葉に歩み寄るときめ。「一葉っ…… …一葉あ! 立って! 動いて! 諦めないで! 生きる事を!」次第に声が大きくなるときめは、一葉に手を伸ばす。ときめの手を取ろうと一葉も手を伸ばした時、飛来したデスの大鎌の柄が一葉の腹部を貫く。床に飛び散る鮮血。それに気付いたWは、初戦でデスがルナトリガーの攻撃を避けた能力を思い出す。ガンナーAが踏み敷いていたのはデスの抜け殻だった。柱の陰から、真っ黒な炎でできたような体に髑髏が縦に四つ並んだデスの本体が現れる。ガンナーAの下のデスの抜け殻の一部が千切れて紐状になり、ガンナーAをぐるぐる巻きにして動きを封じてしまう。残る抜け殻がデスの本体にかぶさり、見慣れた姿に戻ったデスは、一葉を貫いた大鎌を遠隔操作で一葉ごと空中に浮かべる。鎌から抜け、床に落下する一葉。駆け寄るときめ。その腕の中で息をするたびに血を吐き出す断末魔の一葉。「ダメだ! ダメだよ、死んじゃっ……!」と泣きながら叫ぶときめ。一葉は苦しい息で答える「………いいのヨ、ときめサン。アタシは生まれついての人殺しなんだよ。きっとカッター一本だけでも殺人をしてた。…メモリに出会わなくたって同じだった… だから…気にしないで……」。「そんな事あるもんか! 生まれた時から悪い人間なんているはずがない!」とときめ。その言葉を聞いた一葉は、ときめの目を見詰め、血塗れの右手でときめの頬に触れると、呟く「ホント……おんなじ事言うんだね、記憶がなくなってても。相変わらず話が噛み合わないナ……」。ときめに突然過去の記憶が蘇る──
裏風都。対峙するときめと一葉。「生まれた時から悪い人間なんているはずない! もうやめて! 殺し屋みたいな真似は!」とときめ。「あなたが辞めたからアタシがやってるのよ」と冷たく返す一葉。「…………でもっ!」と食い下がるときめに、「もうほっといて」と背を向ける一葉。「嫌いでしょ? アタシの事」と言い捨てる一葉の頬を叩くときめ。一葉は怒り、ときめを睨みつけるが、ときめは涙を浮かべた悲しそうな目をしていた。「……嫌いなのはあんたじゃない。メモリだ。…そうよ……メモリさえこの世になければ…」とときめ。
── 苦しい息で弱々しくときめに語りかける一葉「あの時は…… 言ってる意味もわからなかったけど…… 甘い人だとしか思えなかったけど… …今ならちょっとだけ好(シュ)きって言える…あなたの事」。「一…葉っ……」涙が止まらないときめ。「おかげで楽な気分で死ねる。マジ『安らぎの泉』って感じ…… yokeなんかより……ときめサンの涙のほうが……ずっと、スゴイの……か…も……」「……」、ときめの頬を伝う涙に右手で触れながら、目を開いたまま、しかし笑みにも似た穏やかな表情で息絶える一葉。一葉を抱いたまま上方を仰ぎ慟哭するときめ。
その声に状況を察したWだが、気を取られた隙にオーロラの辮髪の一撃を受け膝を付く。「終わったようだね。…………残念だよ、君たちのせいで私の慈悲が無になって……」と言うオーロラに「慈悲……だと!?」と噛みつくWの中の翔太郎。ときめもオーロラの言葉は聞き捨てならない。「私の力で消されれば苦痛は軽かった。デスに力を奪われ無残に殺されるよりは… だからわざわざここに来たのに… 一葉のために… 彼女を労いたかったからこそ… 胸が痛いよ、本当に…」と自分の胸を押さえるオーロラ。「…本気で……言ってるのか…? だとすれば……おまえは正気ではない…!」と怒るWの中のフィリップ。Wの、握りしめられた左の拳は小刻みにわなないている。デスも口を開く「万灯さんの言うとおりさ。おまえらのせいだよ。そもそも無駄な抵抗さえしなければ私だってもっと早く楽に死なせてやっていた! そのクズ女の望み通りに! 我々の慈悲もわからずそいつを無駄に苦しめたのはおまえたちだ!」。続けて高笑いをするデス。ときめは一葉をやさしく床に横たえると立ち上がる。「…………そうは言わない」とときめが発した言葉に「あ?」と反応するデス。オーロラもときめの方を振り向く。「それは『慈悲』じゃない。『傲慢』だ」怒りに満ちた目で言葉を続けるときめ。オーロラに予感が走る。「どうして……どうして…おまえたちはいつもそうなんだ! なんでそんなに簡単に人の命を奪える!?」と言葉を吐き出すときめの全身からオーラが立ち上る。「……フン、言ったはずだ。それは私が死を司る…神だからだよォ!」と、大鎌を構えるとときめに突進し、ときめの胴を大鎌の柄で薙ぐデス。しかしデスが襲いかかったときめは残像であり、実体のときめは少し離れた場所に立っていた。自分が生身の人間の動きを見失ったことに狼狽するデス。ときめの左手に一葉のガイアドライバーrexが握られていることに気付くオーロラ。うなだれたまま、デスに言葉を返すときめ「神なもんか。おまえらは悪魔だ。メモリの力に酔って、人間以下に堕ちた外道だ!」。ときめが下着に挟んでいた、一葉捜索のためにフィリップから借りた、不完全ながら修復されたジョーカーメモリが光を放ち始める。ジョーカーメモリを手にしたときめは、ドライバーを装着する。Wの中のフィリップが事態を把握する。「やめろっ! ときめーーっ!」と叫ぶWの中の翔太郎。デスが怯える。「思い出した? 私も忘れてた… もうただでは済まないよ。だって……私は、魔女だから!」、叫び声になるときめは、ジョーカーメモリを起動し装着したドライバーの右スロットに挿入する。ときめの上半身に稲妻が走り、地面から生まれた二枚の巨大なジョーカーカードのようなエネルギーがその身体を覆う。次の瞬間、そこには見たことのない異形の怪人が立っていた。頭頂と左右の側頭部、両肩・両腰・両膝裏が鋭角的に立ち上がったスリムなボディは、全身黒一色で、直線で構成されたラインが何本も頭部から全身を走り複雑な紋様となっている。
・次号予告に『風都探偵』なし。
スピリッツ 11号より。y編クライマックス、ジョーカー・ドーパントの能力が明らかになります。次回あたりで完結でしょうか。
■第126話『yの魔窟 8 / 魔女復活』
地下の生体施設「安らぎの泉」。五条一葉をデス・ドーパントに殺害されたときめは、一葉のドライバーとフィリップが修復した自分のジョーカーメモリで、ジョーカー・ドーパントに変身する。オーロラ・ドーパントは喜びと驚きが籠った声をあげ、Wの中の翔太郎はただ驚きの声をあげる。対峙するデスとジョーカー。万灯雪侍の切り札にして「魔女」と呼ばれ、自分の二代前の殺し屋として裏風都に伝説を残すドーパントではあるが、矢ノ神夜一/デス・ドーパントが直接その姿を見たのはこれが初めてだった。舌で貫いたドーパントのガイアメモリを無力化できるデスは、自分の能力を信じ、一本の下を槍のように繰り出す、「おまえは…狩られる側だろうがぁぁぁぁっ!」。舌がジョーカーの胸を正面から貫いた感覚に、ニタリといやらしい笑みを見せるデスだったが、次の瞬間、変身が解除されないジョーカーに驚愕の言葉を発することになる、「あげっ!? バ!バカなッ! なぜ力を失わない!」。手応えのあった舌は、まるで何か硬い物にぶつかったかのように先端が折れ曲がって、ジョーカーの直前で静止していた。(貫けていない!? あいつの身体を!)、状況を理解するデス。「自分のルールが誰にでも通じると思うな。狩られる側の気分を味わってみろ!」、怒りに震えるジョーカーは全身から凄まじいオーラを放ちながらデスに向かって突進した。そのまま放ったジョーカーのパンチは、デスの縦に連なる髑髏の顔の一つを砕き、その身体は吹っ飛ばされて柱に埋まる。ゆっくりとデスに近づくジョーカー。次の瞬間には姿が消えデスの直前に現れたかと思うと、左アッパーから両手での猛ラッシュを繰り出す。デスの大きな悲鳴が聞こえ、デスが埋まっていた巨大な柱が崩壊する。
Wの中のフィリップは、デスの能力を防いだジョーカーの能力をオーラだと分析する、「全身に生体エネルギーの防御幕のようなオーラが張り巡らされている。それがデスの舌の貫通を許さなかったんだ。肉体に刺さらなければ奴はメモリの力を奪えない」。翔太郎は、ジョーカーメモリを修復していた時、出力は3分の1程度しかないと言っていたにもかかわらず、ジョーカーのパワーが凄まじい理由をフィリップに問う。それは、翔太郎もよく知るはずのジョーカーメモリの特性によるものだと答えるフィリップ。(そうか。怒りに燃えたときめの感情が、ジョーカーの力を何倍にも増幅してるのかっ…!)と翔太郎。
吹っ飛ばされるデス。地を這ってでも逃げようとするデスに跳びかかり、両手を握り合わせたパンチを背に見舞うジョーカー。「あいつ、我を忘れて暴走しちまってる! 止めねえと!」とジョーカーに向かおうとする翔太郎/Wを、左手のひらから光線を放つ前兆の高熱を発し牽制するオーロラ、「今は動かないでもらおうか。ときめの心配なら無用さ」。苦し紛れのデスは左手に出現させた髑髏から舌を撃ち出すが、ジョーカーはその舌はをいともたやすく左手で掴むとその舌を引っ張ってデスを引き寄せ、そのボディにカウンターの右パンチを浴びせる。舌が千切れ吹っ飛ぶデス。ジョーカーの左手に残った舌は、ジョーカーのオーラによって燃え始める。舌を捨てるジョーカー。オーロラは、フィリップによるジョーカーの能力の分析を肯定し、翔太郎に対しさらに解説を加える。「フィリップくんの分析の通り、あれはジョーカー特有の生体エネルギー波だ。ジョーカーが使用者の感情の高まりに応じて上限を超える力を発揮するのは、全身にあのオーラが満ちあふれるからだ。君も知らないうちに幾度もその力を発揮してきたはずだよ、左 翔太郎くん。だが、ときめのそれは君の次元を超えている。もとより強い思念波を持っていた彼女は肉体の表面全てにジョーカーのオーラを張り巡らし、鉄壁の防御幕を生み出せる! その上! 圧縮して『切り札』に変えることもできる!」
全身からオーラをみなぎらせるジョーカーが、左腕を胸の前に水平に構えると、左の手の甲から肘関節の手前にかけてオーラで出来た5枚のカードが並んで体内からせり出してくる。最も肘寄りの一枚を右手で抜き取ると、恐れおののくデスに向かってトランプ投げの要領で投擲する。「ぐあああああああ!」 そのカードが、砕けた二個の髑髏の上、デスの最上部の髑髏の額にトスッと刺さった途端に、その髑髏が縦真っ二つに割れる。地をのたうつデスにゆっくりと近づくジョーカー。離れた場所に落ちていた大鎌を遠隔操作し、ジョーカーを背から狙ったデスだったが、気付いて避けたのかオーラが弾いたのか鎌はジョーカーの頭部の右すぐ横を通過してデスの右手に収まる。「このっ……魔女があああッ!」、オーラを込めた大鎌をジョーカーに投げるデス。火の車のように回転しながらジョーカーに大鎌が迫る。ジョーカーの、胸の上・首の下、鎖骨の窪みに当たる位置が光を放ち始める。スパパパパッ そこから出現した数枚のオーラのカードがジョーカーの右手のひらに吸い込まれるように収まる。ジョーカーは、シュバッと扇のように広げたカードでデスの大鎌をたやすく弾くと、カードを円形に広げデスに向かって投げる。ぐばぁ 直撃を受け、また倒れるデスは、息が荒い。「ねえ……ふざけてるの……?」デスに静かに話しかけるジョーカーだったが、すぐに怒鳴り声になる「ふざけるなッ!」。ビクッとなるデス。「こんな攻撃しかできないの? メモリの力を消した無力な相手をいたぶり殺すだけ… そんな程度の強さのくせに、神様気取りで人の生命を奪い続けてきたの?」「たとえ一葉がどんなに罪を重ねてきた悪人でも…おまえなんかに……」 ジョーカーの脳裏を、拾ったインビジブルメモリを使ってデスから自分を救ってくれた時の一葉の言葉「人殺しが…メモリで人を助けちゃうなんて」がよぎる。ジョーカーの言葉がまた怒声に変わる「おまえなんかに! 裁かれていい人間じゃなかった!」。ジョーカーは再びカードの束を出現させ右手に取ると、両手の間で高速シャッフルした後に両手のひらを合わせ、カードの束を両手の間に浮遊する1枚のカードへと合成する。そのカードを左手に持ったジョーカー「覚悟しろ。おまえには、罪を数える資格もない!」。ときめがデスに止めを刺そうとしていることに気付き「ダメだ!ときめーっ!」と駆け寄ろうとするWだったが、オーロラが左手のひらから放った光線がWの右肩をかすめ、Wは悲鳴をあげて足を止める。ジョーカーは圧縮した1枚のカードをデスに投げる。そのカードはデスの一番下の髑髏に刺さると光を放ち、デス自身がジョーカーの絵柄となったかのようにデスを封じこめた人間大のカードに変化した。そのカードの中ではデスは身動きできず声を発することもできず脱皮して逃れることもできなかった。キュイイイイン ジョーカーの身体を包むオーラが輝きの濃さを増していく。右腕を押さえながら「やめろ、やめるんだ!」と声を放つ翔太郎/W、Wの中のフィリップも「ときめーーーーっ」と叫ぶ。ジョーカーはデスに向かって駆け出すとハイジャンプからライダーキックのようなキックを、デスを封じ込めたカードに放つ。ドン という凄まじい振動が走り、ジョーカーのキックの衝撃はカードの背面にまで抜ける。ジョーカーに向かおうとした姿勢のまま固まるW、ほくそ笑むオーロラ。
・次号予告に『風都探偵』なし。
■風都の女神たち ときめ役 関根明良 × スクリーム・ドーパント/五条一葉役 伊藤美来 インタビュー
・センターカラー:見開き2頁&1頁が二人のグラビア。
・カラー1頁(それぞれジョーカーとスクリームのドーパントメモリを構える二人)で、インタビューのオープニング。
・ときめとスクリーム、共通点は……「揺れる」こと!?
・万灯雪侍の威圧感、照井 竜の不思議、スクリームの「愛の叫び」?
・多くの愛に支えられた作品だからこそ、いつか「続き」を演じたい。
コミック第14巻は4/28発売。既に予約始まっています。
スピリッツ 13号より。y編完結。再開は4月末頃、14巻も4月末発売とのこと。
■第127話『yの魔窟 9 / さよなら探偵助手』
オーラで作った人間大のトランプのジョーカーのカードに、まるで平面的な道化師の絵柄であるかのように封印したデス・ドーパントに対し、燃えるようなオーラを纏い強力な跳び蹴りを浴びせたジョーカー・ドーパント。「あがががが」とデスの悲鳴があがる。粉々に砕け散るカード。着地したジョーカーの背後で大爆発が起きる。爆煙の中からよろよろと足を引きずりながら矢ノ神夜一が歩み出てくる。右肩から先は無くなっているように見える。眼鏡が地に落ちレンズが割れる。「…伝説の魔女に殺される……のか……死に方としては……まあ悪くない……」と言い残すと、膝を付きそのまま突っ伏すように倒れ、息絶える。
爆炎を前に直立するジョーカーの後ろ姿を見詰めるオーロラとW。Wの中のフィリップがオーロラに問う「万灯雪侍…おまえはなぜぼくたちのほうを止めた? なぜ味方を見捨てたんだ!?」。オーロラが答える「……デス……矢ノ神夜一は難のある男だったが、一葉がいない今、最強の殺し屋だった… 裏を返せば、それ以上の強者が手に入るのなら特に存在価値のない人材だ」。「!」その言葉にWの中の翔太郎が激しく反応する「ときめを…裏風都の殺し屋にするためにあえて戦わせたって言うのか!」。「ああ、元からそうだったからね」「それに『殺し屋』とは言わない。ただの殺し屋なら一葉以上はいなかった。ときめは私たちの街の…『守護神』さ」とオーロラ。
ジョーカー・ドーパントの姿が、分身したかのように前後にブレる。変身が解除される一瞬に、ときめに過去の記憶が蘇る。──万灯雪侍と愛し合っていた日々、エターナルの風都侵攻に遭遇した日、狂ったのか叛逆者か或いは叛逆したときめへの追っ手か裏風都でドーパントの群れを惨殺していた日々── ときめの目から涙が流れる。
その時、激しい音が聞こえ、「安らぎの泉」の天井が崩れ落ちてくる。外の陽の光が差し、天井に空いた穴からブラキオサウルス・ドーパントの巨大な姿が「安らぎの泉」の中を覗いていた。ブラキオサウルスの首から頭部に当たる部分は「安らぎの泉」の中に入ってきており、恐竜の頭部に当たる部分の上にはリアクター・ドーパントの姿も見えた。飛行し、彼らに合流するオーロラ。地底には裏風都へのゲートを開けないので、リアクターの熱とブラキオのパワーで穴を掘ったのだと言う。
一瞬振り向いて「では失礼するよ、仮面ライダー」と左手を振るオーロラ。その左手にオーラ製のカードが突き刺さる。「勝手に失礼するな……」再び変身したジョーカー・ドーパントが言葉を続ける「…この場で逃がすと思うのか……ユキ…」。その行動に驚くブラキオとリアクター。「『ユキ』か。その呼び方…記憶が戻ったんだね、ときめ。まあそうでなくては変身できていないが…」とオーロラ。そのオーロラを見詰めるジョーカー。オーロラは刺さったカードを引き抜いて握り潰し「…また…血塗られた日々の始まりだな…」と言い捨てて、三体で地上に空いた裏風都へのゲートへと入っていく。それを追って瓦礫を跳躍していくジョーカー。「ときめ! 行くなっ! 頼む! 行かないでくれ!」と叫ぶWの中の翔太郎。矢ノ神と一葉の死体を一瞥したジョーカーは、「ごめん……フィリップ。私は…翔太郎みたいにはできなかった……」と言い残すと、大きく跳躍して閉じかけていたゲートの中に飛び込んだ。修復したジョーカーメモリを託された時の、フィリップの言葉への謝罪だった。天井の穴から見える青空、差し込む日差し。ときめの名を呼ぶ翔太郎の声が響く。
裏風都。路上に累々と重なるマスカレード・ドーパントとロード・ドーパントの死骸。万灯雪侍、千葉秀夫、双見 光は医務室のような場所で各自怪我の手当てをしている。追ってきたジョーカーの急襲を受け、この三人掛かりでどうにか撃退できたのだという。秀夫が万灯に問う「これも狙い通りなんですか、万灯さん? いくらときめさんの力が復活しても現時点では敵と同じです。一葉さんを始末したとはいえ、夜一さんを失い、敵対勢力が一つ増えた。マイナスのほうが大きくないですか?」。万灯が答える「いや、私にとってはときめの復活が最優先だ。いつかこの日がくる事を願って、あえて仮面ライダーたちの側にいる事も黙認してきたんだ。ガイアメモリ犯罪の渦中に身を置いていれば、必ず彼女に影響を及ぼすだろう、と。案の定、今回それが現実のものとなった。仮面ライダーたちが復元したメモリと! 一葉の残したドライバー! 二つの不確定要素が重なってときめはすべてを取り戻したのだからね! 彼女の敵対心? そんなものは二の次だ。本人がこの手に入りさえすれば味方にする方法ならいくらでもある。投薬、洗脳、催眠… みんな君のお手の物だろう、秀夫くん?」「…まあ、それはそうですけど…」と秀夫。「本人の気持ちなど問わない。この街の守護神が最後に私の傍らにいれば、それでいいんだ…!」と万灯。双見 光は密かに(…たしかに…こっちにも特大の火の粉がかかってきそうだよ、秀夫さん)と思う。
「安らぎの泉」は警察によって現場検証され、オウル・ドーパント/鳥羽音吉の過去の悪行は白日の下にさらされた。警察が回収した過去の遺体の総数は49人。その数には残念ながら殺し屋・矢ノ神夜一と…五条一葉も加わっている…………
鳴海探偵事務所。主のいないデスクの上のタイプライターのキーを一つ、亜樹子が押してみる。コーヒーが置かれたテーブルで読書をするフィリップ。「…過去最高に憂鬱な締めくくり、だよね。依頼した人もいなくなって…探してた人も死んじゃって、…誰にどう報告すればいいんだろ?」と亜樹子。「…ときめの依頼は一葉を見つけることだった。それは達成し、ときめは自分の気持ちを一葉に伝える事だけはできた…… そう…思いたい…… せめて…」とフィリップ。主のいない椅子の肘かけに手を置き「…こっちの探偵はそう思えないと思うよ」と亜樹子。「そうだね… ときめが裏風都に消えた時、彼女はぼくにだけ声をかけたんだ… 翔太郎には…何も言えなかったんだと思う。おそらく言葉が出なかったんだろう… 『さよなら』の一言すら……」とフィリップ。主のいない椅子を見て、そこで翔太郎とときめが戯れていた姿を思い出し、涙を浮かべる亜樹子。
翔太郎はひとり港で海を眺めていた。(大方の別れは突然だ。それはわかっている。わかっていたって何年経っても耐えられるようにはならねえ……)スタッグフォンで呼び出してみるが「圏外」である。(俺はその日… 初めてできた探偵助手を失った────)
裏風都のとあるビルの屋上。左手からは決してドライバーとメモリを手放さない。鳥を焼いて食っている。頬には一葉の血が付いたままである。ときめは立ち上がると裏風都のタワーのような建造物を見詰める。